なぜ“鉄製”なのか?
使い比べてわかった、裏切らない道具の真価
フライパンには、さまざまな素材があります。軽くて扱いやすい「アルミ」、焦げつきにくい「テフロン」、スタイリッシュな「ステンレス」──。私も開発の過程で、これらすべてを実際に使い比べました。
でも最後に選んだのは「鉄」。重さもあるし、最初は少し手がかかる。けれど今、こうして毎日使い続けて思うのです。

鉄は、裏切らない。その理由を、他素材との比較を交えながらお伝えします。
他のフライパン素材はどうなのか?
アルミ(+フッ素加工)
- とにかく軽い。扱いやすいのは大きな魅力。
- しかし、熱が冷めやすく、保温性が低いため焼きムラが出やすい。
- 焦げ目はつきにくく、パンが「白っぽく仕上がる」ことも。
テフロン(フッ素樹脂コート)
- 焦げつかず、洗いやすい。初期の快適さは抜群。
- しかし、やや高温に弱く、トーストには焼き色がつきにくい。
- 数ヶ月〜1年でコーティングが剥がれ始めるのが現実。
ステンレス
- 見た目が美しく、耐久性もある。
- けれど、しかし熱伝導率が低いため、全体に均一に熱が伝わりにくい。
- 「サクッと」より「カチカチ」に仕上がることも。
鉄製フライパンが見せてくれた実力
では鉄はどうか。
- 高温に強く、100秒でパリッと焼ける
- 保温性が高く、外サク中フワを両立できる
- 使うたびに油がなじみ、焦げつきにくく育つ
- 洗剤不要。水でサッと流すだけでOK
- 削れず、剥がれず、長く使える
つまり、トーストに必要なすべての条件を満たしているのです。
特に驚いたのは、香ばしさの違い。鉄で焼いたトーストは、パンの表面にほんのりと“香る”焦げ目がつき、まるでグリルで焼いたような奥行きのある味に。それは他の素材では、どうしても再現できませんでした。
もちろん、鉄にも“クセ”はあります。
たとえば──
・重い。手首にずっしりくる重さがあります。
・使い始めは焦げつきやすい。油がなじむまでは慎重な火加減が必要。
けれど、それすらも“育てる楽しみ”。手間がかかる分、道具への愛着もわいてくるのが鉄の魅力です。

「鉄=手間」という誤解
確かに、使い始めは焼き入れが必要ですし、使った後に水気を飛ばすなどのひと手間はあります。
でもそれは、「ちょっとした習慣」でしかありません。それよりも、朝の1枚を自分好みに焼き上げられる確かな実力。毎日、焦げつかず気持ちよく使える安心感。そして、10年、20年と使い続けられる強さ。
それらを考えると、「手間」ではなく「価値」だと、今は思えます。
【まとめ】鉄は、裏切らない。
手軽さや便利さだけを求めるなら、他にも選択肢はあります。でも私は、“一枚のトースト”に本気で向き合える道具を選びたかった。そして行き着いたのが、「鉄」という選択。
食パンの表面を香ばしく焼き上げ、洗って乾かすたびに育っていくその感覚。それは、単なる調理器具を超えて、“自分だけの道具”になっていく喜びでもあります。
だから私は、鉄を選びました。そして、今もその選択にまったく迷いはありません。