なぜトースターのパンはパサつきやすいのか?──水分移動と熱の違いから考える『焼き方』の科学 - Kitchen Orgone

BLOG & INFO

フライパン

なぜトースターのパンはパサつきやすいのか?──水分移動と熱の違いから考える『焼き方』の科学

朝、同じ食パンを焼いたはずなのに。

焼きたてはおいしい。
でも少しすると、なんだか乾く。
冷めると固くなり、香りもすっと消えていく。

「パンのせいなのだろうか?」

そう思いながら、私は焼き方の違いを調べてみました。
すると見えてきたのは、“水分”と“熱の入り方”の違いでした。

パンの中で起きていること

パンを焼くとき、内部では水分が移動しています。
加熱されると、水分は温度の高い表面側へ引き寄せられ、蒸発します。

食品科学の分野では、急速加熱では水分の勾配が大きくなり、
表層から急激に水が失われることが知られています。

つまり、表面が急に高温になるほど、水分は急に外へ逃げるということです。

この現象が、パサつきの第一の要因です。

トースターの熱の特徴

一般的なトースターは「輻射熱(radiant heat)」が中心です。
ヒーターからの強い熱が、パンの表面を一気に高温にします。
場合によっては250℃以上に達することもあります。

その結果、

・表面が急速に乾燥する
・クラスト(外皮)がすぐ形成される
・内部水分が外へ移動しやすくなる

外はカリッとしますが、内部の水分保持は難しくなります。

フライパンの熱の入り方

一方、フライパンは「伝導熱(conductive heat)」です。
底面からじんわりと熱が伝わります。

表面温度は180〜220℃程度で推移することが多く、
急激な表面乾燥が起きにくい特徴があります。

・水分蒸発が比較的穏やか
・内部までゆっくり温まる
・水分保持のバランスが崩れにくい

この違いが、焼き上がりの体感差につながります。

デンプンの変化と硬さ

パンの主成分であるデンプンも、加熱で変化します。
急激な高温環境では、表層の構造変化が早く進み、
硬さを強く感じやすくなります。

ゆるやかな加熱では、
内部水分とのバランスが保たれやすく、
しっとり感が維持されやすい傾向があります。

水活性(aw)の視点

食品科学では「水活性(aw)」という概念があります。
これは食品中の“自由に動ける水分”の指標です。

急速加熱では表面の水活性が急低下し、
内部との水分勾配が大きくなります。
結果として、内部水分が外へ移動しやすくなります。

つまり、パサつきとは単なる水分量の問題ではなく、
水分の分布バランスの問題なのです。

パンの問題ではなかった

ここまで整理すると、結論は意外とシンプルです。

トースターが悪いわけではありません。
パンの質が低いわけでもありません。

違いは、熱の設計です。

急加熱は水分を早く動かし、
穏やかな加熱は水分を保ちやすい。

その違いが、
「冷めた後の固さ」や「パサつき」に表れているのです。

焼き方を変えるという選択

同じ食パンでも、
加熱プロファイルが変われば、体感は変わります。

外はサクッと。
中は水分を保ったまま。
冷めても固くなりにくい。

それは、特別な材料の力ではなく、
水分と熱の関係を理解した焼き方の結果なのかもしれません。

次にパンを焼くとき、
少しだけ熱の入り方を意識してみてください。

きっと、同じパンでも
違う表情を見せてくれるはずです。

この記事の著者

Kids Pockets 店長 WATARU

20年以上にわたりベーカリー製品等の商品企画開発に関わってきました。
「食を通じて人に寄り添い、美味しさで驚きと感動を届けたい」という想いのもと、暮らしをもっと楽しく、豊かにする商品づくりに取り組んでいます。開発商品「サクッと、ふんわり 食パン専用鉄製フライパン〈ルポア〉」は、数年にわたり理想のトーストを追求したこだわりの一品です。食パンの“本当のおいしさ”を引き出す道具として、多くの方にお届けします。

コメントは受け付けていません。

関連記事

プライバシーポリシー / 特定商取引法に基づく表記

Copyright © 2025 株式会社Kids Pockets All Rights Reserved.
ショップリンク